コラム

柊クイチ [2012/3/26]

水関係のコラムを書くようになってネタに困っているのだけれど、水繋がりで今回は氷の話でも。

氷と聞くと、森鷗外の娘の森茉莉という方が書いた『貧乏サヴァラン』という本に載っていた、ダイヤ氷を連想します。
彼女の家には冷蔵庫がないのだけれど、それでも夏場の執筆のお供に冷紅茶を飲みたい(しかも、元々冷凍庫の氷が好きではない)。
そういう訳で近所の店に買いに行くのだけれど、秋に近づくとその店でのダイヤ氷の扱いがなくなってしまうので、遠くの店に買いに行かないといけない。
面倒だけれど、ダイヤ氷でないと茉莉の舌は満足できないので致し方なく買いに行く、という下りです。

氷ひとつに何というこだわりかと読んだ当初は思ったものですが、その表現が何とも美味しそうで、見たことのないダイヤ氷が目に浮かぶようでもありました。

読みながら、でも私自身氷は好きだったなあとふと思いました。
夏、よく冷凍庫を開けて背伸びして(冷凍室が上にあるタイプの冷蔵庫だったので)、製氷室から氷を失敬しては、舐めていました。

それから夏は何と言ってもかき氷。夏に祖母の家に行くと、近所で数箇所お祭りがある場所があり、従姉妹とお祭りに行ってはかき氷を買いに行っていました。
普段は合成着色料が…とお菓子に渋い顔をする大人達も、この時ばかりは『お祭り行くならかき氷買って来て』と100円玉を手渡してくることも多かったのです。
昔からある氷菓子ですが、好きな人は本当に好きなのは間違いありません。
私はイチゴミルクが好きで、従姉妹はブルーハワイやメロン。真っ赤だったり真っ青だったり真緑になった舌を笑いあいながら、時々急いで食べ過ぎて顔をしかめたり。

他にも氷と言えば、冬の朝凍った水溜りを踏み砕くのが楽しみのひとつでした。綺麗に張った氷の表面に軽く体重をかけると、ミシッパキンッとヒビが入り砕ける時の儚い感触が好きでした。
友達と見つけては、先を争うように割っっていました。

たまに水溜りの底まで凍りついて砕けない氷の上では、くるくる回ってみたり。友達のマフラーがひらひら揺れていた光景を今でも思い出します。

寒い地方に引っ越してからは、氷柱を初めて見ることになって驚いたことを覚えています。童話の中でしか知らなかった氷柱が、近所の家の軒先から本当に垂れ下がっているのですから。氷柱の下にいると危ないよ、と注意されながらも、それはなかなか目が離せない光景でした。

……という訳で、氷に関しての記憶をつらつらと並べてみました。最近は寒さも大分和らぎ、外で氷を見ることもあまりなくなる季節にさしかかろうとしています。

雪が溶けると何になる? とどこかで聞いた覚えがあるのですが、そろそろそんな季節ですね。